~生まれてくる御自分の赤ちゃんを
母乳で育てたいとお考えのあなたへ~
はじめに
「おっぱい」…。なんてやさしくて、やわらかくて、あったかい響きなんでしょう!
いつ、誰が、このことばを言い始めたのか分からないのですが、
今も昔もこのことばのもつイメージは変わらないのではないでしょうか?
お母さんのお腹の中で大切に育てられてきた赤ちゃんは、
この世に誕生すると
それまで胎盤・へその緒を通してもらっていた酸素は自分で呼吸することで、
栄養はお母さんのおっぱいを飲むことで
供給するようになります。
そのごく自然の成り立ちが、今日ではうまくいかなくなっているのが現状です。
「母も姉も友人も母乳が出なかったから、母乳で育てるのは難しいのかな??」
「1人目の時に母乳不足で、知らない間にミルクだけになってしまったから、
今回も母乳は無理かな?」
と、考えて母乳育児を希望しているのにあきらめてしまう方はたくさんいらっしゃいます。
でも、そんなことはありませんよ。
哺乳動物に生まれた以上、母乳でわが子を育てられないお母さんは、
よほどの理由があってのこと…。
日本母乳の会(HPあり)会員の医師の先生方は
本当に母乳で育てられない方は全体の2%弱とおっしゃっています。
日本母乳の会HPは ここから
では何故、日本の母乳育児率は50%以下で、
粉ミルクを買うことができない発展途上国や
母乳育児推進に積極的に取り組んでいる他の先進諸国よりも低いのでしょうか?
それはほとんどの場合、お母さんやご家族が、
「母乳が出ていないから赤ちゃんがよく泣くんだ。」
「母乳が足りないから、思うように体重が増えないんだ。」
と思い込んでしまうからです。
「母乳が足りないのなら、ミルクを足さなくては赤ちゃんを
ぐっすり寝かせたり、大きく育てたりすることはできない。」
そう思うことで、余分なミルクを足してしまいます。
そのことで、赤ちゃんは満腹になり過ぎてしまい、
その結果、赤ちゃんがあなたの乳首を一生懸命吸ってくれなくなるのです。
更には、赤ちゃんに乳首を吸ってもらえないためにホルモンの分泌量が減り、
ますます母乳の分泌量が減ってしまうことになるのです。
母乳についての正しい知識と妊娠時期からの準備、生まれてすぐからの頻回授乳で、
あなたも、赤ちゃんがおいしく飲んでくれる母乳をきっとたくさん出せるはずなのです。
しかし、日本の一般的な分娩施設では、
それらの指導やケアが十分に行われているとは限りません。
皆さんはご存知ですか?
以下の事柄は、WHO 世界保健機構
が母乳育児の推進の目的で出した声明です。
~母乳育児成功のための10か条~
WHO/UNICEF共同声明(1989)
産科医療や新生児ケアにかかわるすべての施設は以下の条項を守らねばなりません。
1.母乳育児についての基本方針を文章にし、 関係するすべての保健医療スタッフに周知徹底しましょう。
2.この方針を実践するために必要な技能を、 すべての関係する保健医療スタッフに訓練しましょう。
3.妊娠した女性すべてに母乳育児の利点とその方法の関する情報を提供しましょう。
4.産後30分以内に母乳育児が開始できるよう、母親を援助しましょう。
(結構多くの施設は出産後1~2日で授乳を開始しているらしい)
5.母親に母乳育児のやり方を教え、母と子が離れることが避けられない場合でも
母乳分泌を維持できるような方法を教えましょう。
6.医学的に必要でないかぎり、 新生児には母乳以外の栄養や水分を与えないようにしましょう。
7.母親と赤ちゃんがいっしょにいられるように、終日、母子同室を実施しましょう。
(生まれてからすぐに母児同室している施設はかなり少ないらしいです)
8.赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけの授乳を勧めましょう。
(夜間も赤ちゃんはおっぱいを欲しがっていますよ)
9.母乳で育てられている赤ちゃんに人口乳首やおしゃぶりを与えないようにしましょう。
10.母乳育児を支援するグループづくりを後援し、産科施設の退院時に母親に紹介しましょう。
~母乳代用品の販売流通に関する国際基準~
(通称WHOコード)
1.母乳代替え品(ここでは人工乳だけでなく、哺乳ビンの乳首なども含む)は宣伝してはいけない。
2.無料サンプルを配ってはいけない。
(某大手ショッピングセンター内では毎月1回はミルク会社がサンプルを配って、
「9が月になったら母乳には栄養がなくなるので、
フォローアップミルクに変えた方がいいですよ。」と言っているとか?)
3.医療施設で製品を売り込んではいけない。(お土産にミルクを配っている施設もまだあるらしい)
4.業者は、看護師、栄養士を医療施設などに派遣して、指導したり、製品を売り込んではいけない。 (栄養指導の栄養士さんってミルク会社の派遣社員だったりししませんか)
5.医療機関に贈り物をしたり、母児に対して個人的にサンプルを配布してはいけない。
6.赤ちゃんの絵を人工乳のラベルなどに使ったり、理想化するような言葉
(母乳に近いですなど)を使ってはいけない。
7.医療関係者への情報は、科学的データに基づくものでなくてはいけない。
8.ラベル表示に全て、母乳保育の利点をきちんと書き、人工乳保育のマイナス面、
有害性を説明しなければいけない。
9.不衛生な製品は売ってはいけない。
10.全ての製品は品質の高いものであるべきであり、使用される国の機構及び使用状況を
考慮に入れるべきである。10か条とWHOコードに基づき、
母乳育児に積極的に取り組んでいる医療機関を
ユニセフとWHOは、1991年より『赤ちゃんに優しい病院』として、認定しています。
(三重県では津市久居にある三重中央医療センターだけが認定施設です。)
つぎに
大震災の時にミルク育児のお母さんが困ったことと言えば、きれいな水がないことです。
ミルクをつくるための水のみならず、哺乳瓶を洗う水もなかったのです。
母乳はお母さんの血液からつくられるので、そんな心配はいらなかったのです。
アフリカでは裕福な家庭のお母さんは、上流階級のステイタスとして、
高価な輸入ミルクを飲ませようとしましたが、
水が汚かったために赤ちゃんが重症の胃腸炎になってしまった という話も聞いたことがあります。
今後日本でもどんなことが起こるかもしれません。
でも母乳ならそのような心配することはいりませんよね。
さらに
乳育児に関する情報で、皆さんによく勘違いされていることがあります。
皆さんは下記のような情報を鵜呑みにしていませんか?
1.お産の疲れが癒えて、おっぱいが張り始めた出産後2日頃が、おっぱいの始め時である。
2.入院中は体を休める時期なので夜間はよく寝て、その間はミルクを与えてもらった方が早く母乳が出るようになる。
3.赤ちゃんが疲れないように、授乳は3時間おきに片方10分ずつ以内で終わらせた方がよい。 また、3時間もたないようなら母乳は足りていないのでミルクを足す。
4.1ヶ月健診で赤ちゃんの体重は生まれた時から約1kg、1日平均30g以上増えていないと母乳不足である。
5.つくられた母乳が十分溜まって、おっぱいが張ってくるまでは、お赤ちゃんに吸わせても無駄である。
6.短い乳頭やへこんだ乳頭など吸わせにくい乳頭は、搾ったものを哺乳で与えるか、
乳頭保護器をつけて飲ませなければならない。
7.母乳分泌量を増やすために、高カロリーの食事はもちろん、動物性たんぱく質や牛乳を多めに食べたほうがよい。
8.分泌量が不足している時には牛乳をたくさん摂取するとよい
9.離乳食が進んだ9か月頃には母乳の栄養価は低くなるので、
フォローアップミルクに変えた方がよい。
10.1歳を過ぎると甘えが出ておっぱいを止めにくくなるので早めに断乳した方がよい。
11.母乳を吸い続けると虫歯や歯並びが悪くなるので、早めに断乳した方がよい
いろいろな情報に惑わされて悲しい思いをしているお母さんによく会います。
「おっぱい道場に参加できないまま出産したけど、
やっぱりひまわりや開業助産師の助けが欲しい。」
と思った方はなるべく早い時点でご遠慮なく、お電話下さい。
さいごに
助産所マタニティハウス「ひまわり」で出産されたお母さんの95%以上は、
約5日目の退院の時にミルクを足さずに赤ちゃんを育てることができています。
それは、特に難しいことをやっているわけではなく、
古来から日本のお母さんたちが出産後に自然にやってきたことに加え、
妊娠期間中に母乳育児についての注意点などのお話を聞いてもらったり、
後期の妊婦健診時におっぱいのケアをさせていただいたりしているだけなんです。
「ひまわり」で出産はしないけど、おっぱいでは育てたいと考えてみえる方の中で、
少しでも多くのお母さんが、自信を持って、楽しく母乳育児ができるようにと、
今回この「おっぱい道場」を立ち上げました。
妊娠期の学習会「アンジュおっぱい道場学習会」から始まり、
出産前のケアはもちろんのこと、 、
産後のケアとしては、
分娩施設に入院している間はひまわり方式が取れないために、
退院と同時に完全母乳育児になるのは難しいかもしれませんので、
退院後できるだけ早い時期に産後のケア、指導をさせていただく予定です。
ご都合のいい日にひまわり外来または
ミドワイフステーション安授の助産師の訪問にご予約ください。
わが子を母乳で育てたいと考えている方、母乳育児に不安がある方、
母乳育児に興味がある方はどうぞご参加ください。